希少性の法則を示す心理学実験とマーケティング事例。
人は何処でも手に入るものは価値が低く、
数が少ないものは価値が高いと考える傾向にあります。
その商品やサービスの本質的な価値よりも、
客観的な「希少性」のみを重視し、
漠然とした判断で希少性の高い方の商品を
その本質的な点でも「価値がある」と判断してしまうわけです。
「少ないからこそ他人もその商品を欲しがるはず」
「故にそういった商品は高額で当然である」
「そうであるからこそ希少価値が高くなっているのだ」
と自分自身の中で商品の価値と希少性を
無意識的に結び付けて決め付ける傾向にあるとされています。
希少性の法則とその心理学実験。
希少性の法則を立証する心理学実験として有名なのは瓶の中にクッキーを入れそれを被験者に食べてもらい、
その「味」を評価してもらうという実験がありました。
瓶の中には2個のクッキーが入ったものと
10個のクッキーが入ったものを用意し、
それぞれを食べ比べてもらい感想を述べさせたというものです。
ただその中身のクッキーはいずれも同じものでした。
結果としてクッキーを食べた被験者の大半が
残り2個の瓶に入ったクッキーの方を「おいしい」と回答。
その味覚さえ、この「希少性の法則」によって
実際に左右されたというわけです。
希少性の法則とそのマーケティング事例。
希少性の法則を示す実際のマーケティグ事例として、逆にこの希少性の法則で失敗をしたと思われる企業が存在します。
誰もが知るあの「コカ・コーラ」です。
コカ・コーラでは一時ペプシコーラに売上が圧迫され、
それを挽回する方針としてメイン商品である、
コカコーラの味をリニューアルする事を決定しました。
当然、リニューアルに際しては何度もブラインドテストが行われ
これまでの味とリニューアルした新味とで味を比較させ、
圧倒的にリニューアルしたものの方が「おいしい」とする
「ニューコーク」の支持を獲得した上で、
満を持して実際にコーラの味はリニューアルされました。
ただリニューアルコーラ「ニューコーク」は
多くの消費者から批判の声を浴びるようになります。
物凄い量のクレームの電話が殺到し、
結果としてコカコーラ側は元のコカコーラを
「クラシックコーラ」として復活させる事になりました。
これが数十年前に起きたアメリカでの
コカコーラの「味変え失敗」の一件です。
この一件を受けてコカコーラ社は、
もとのコカコーラの味の「ブランド力」を見誤ったとして、
味覚にも「ブランド」による影響があったのだと、
自社の商品とブランド力に対し更に自信を強めたと言いますが
この一件はそもそものブラインドテスト段階と
ニューコーク発売後の「旧コカコーラ」販売終了時における、
「希少性の法則」を見過ごしていた為に起きた一件と見る事も出来ます。
ブラインドテストの際そこに参加したモニターは、
まだ多くの人が味わっていない「ニューコーク」の希少性に
味覚的な面でも「価値」を感じてしまったのではないでしょうか。
そしてニューコーク発売後は
もう販売されなくなってしまった旧コカコーラに対し、
多くの消費者はまた「希少性の価値」を感じる事となり、
もう飲めなくなってしまったコーラの味を求めたとも考えられます。
まさに2つの意味で「希少性の法則」が作用し、
コカコーラ社はコカコーラのリニューアルに失敗したと言えます。
既存の商品に対して新たな商品等を打ち出す際などは
色々な観点からこの「希少性の価値」を考慮するべきなのかもしれません。
広告戦略、マーケティング戦略の上では是非注意を払ってみてください。
K.Uzaki
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